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コラム

CASE_11 世界基準のパッシブハウスを建てる~地域の暮らしを楽しむ住まいのアイデア~

 

 

 

 

 

■Data

【牛田パッシブデザインハウス】

所在地:広島市東区
家族構成:2 人(夫婦)
敷地面積:394.52㎡         延床面積:241.72㎡
1 階面積:121.14㎡         2 階面積:120.58㎡
断熱性能:0.342W/㎡・K      気密性能:0.18㎠ /㎡
設計:G proportion アーキテクツ
施工:大之木ダイモ

 

2016年、広島市の住宅街に世界レベルの超省エネルギー住宅が完成しました。環境先進国ドイツのパッシブハウス研究所が規定している性能基準を目指し、日本の一般的な省エネ基準の2倍相当の高断熱・高気密を実現しています。具体的には、屋根や壁に断熱材を通常よりも分厚く入れ、窓には断熱性の高い樹脂サッシ+トリプルガラスを使っています。さらに基礎の下、すなわち地面にも約50 ㎜の断熱材を敷き、家を上から下まで断熱材でしっかり包み込んでいます。

この家がすごいのは、単に断熱性能が高いだけではないところ。冬には、暖房をできるだけ使わないで済むように日射しをうまく部屋に取り入れて、太陽の力で部屋を暖める工夫をしています。幸い敷地は、南側道路の整形地。そこで建物は東西に長くレイアウトして、南面は構造上許される最大のサイズの窓を設けました。そのため、冬の日当たりは抜群で、真冬でも室内はエアコンなしでも暖か。起床時や帰宅時には「暖房を消し忘れたかな」と勘違いするほどだそうです。

一方、夏の暑さが気になりますが、心配ご無用。断熱性能が高いので、外の暑さの影響を受けず、冷房がよく効くのです。また、夏は太陽の南中高度が高いので、強い日差しは深い軒で遮ることができます。この家を設計する際に、すべての季節と時間帯の日照角度を計算して、軒の深さを決めたと言います。

このように緻密な省エネ設計によって、この家は200㎡以上ある大きな家にもかかわらず、光熱費は、それまで住んでいた80 ㎡のマンションのときと比べて、約半分になったそうです。

 

 

 

 

 

 

リビングに面したバルコニーにはいつでもくつろげるようにテーブルセットを置いて、まるでリゾートホテルのような佇まい

 

 

 

牛田パッシブデザインハウスの外観。南側に向いて窓を設けている。家とガレージで庭を囲うようにして、プライバシーも確保

 

 

 

軒裏天井にも無垢の木材を張り上質感を出した。この軒の深さは緻密な計算によってつくられたもの。冬には日を入れ、夏の日差しを遮るパッシブデザイン

 

 

【日当たりの良いダイニングで過ごす昼下がり】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この家で暮らすI様夫婦は、2人とも医師。職業柄、プライベートではなるべく心身がリラックスできる環境に身を置きたいと願っていました。

奥様のお気に入りは、ダイニングから見える景色。2階LDKの天井まで届く大きな窓の向こうには、二葉山の鮮やかな緑が広がり、二葉の里の仏舎利塔が見えます。ダイニングに座って外を眺める時間こそ、奥様にとって最高のリラクゼーション。サンサンと光が差し込む明るい空間には、時折、友人を招いておしゃべりを楽しむことも。

 

 

 

 

床材は無垢のマホガニー。天井は節のないツガ。壁にはフェザーフィールという西洋漆喰をローラーで塗ったゴージャスなLDK

 

【集中と息抜きとすべてを兼ね備えた仕事部屋】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ご主人のお気に入りは、2階リビングの奥、スキップフロアの上につくった仕事部屋です。ロフト風の少し低めの天井には天窓がついて、外の光が仕事部屋を明るく保ちます。机のそばの窓からは庭を望むこともでき、仕事に集中できるおこもり感と開放感の両方を持ち合わせた空間となっています。また、LDKにいる奥様とは、互いの姿は見えなくても、声をかけたり、会話することはできる、程良い距離感も気に入っているそうです。

こうして休日に、各々がお気に入りの場所で過ごし、仕事を忘れ、心身を開放することで、翌朝から気持ち良く仕事に出かけていけるといいます。

 

 

 

 

 

 

 

仕事部屋はリビングとつながっているので、会話しやすい。スキップフロアの下は奥様のピアノ室

 

【街中で屋外の開放感を味わう庭の時間】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「水やりなどの手入れをし、時には裸足で芝生を歩きます。するとよく眠れて、リフレッシュできるんですよ」と話すのは、ご主人。植物や芝生の水やりをしながら、癒やされているといいます。道路側にはご主人の愛車を格納するこだわりのガレージがあり、渡り廊下と母屋でコの字を描くように庭を取り囲んで、外から見えづらいように設計されています。そのため、街中にいながら屋外の開放感を味わうことができ、人目を気にすることなく友人や職場の人とパーティーやバーベキューも楽しめます。

 

 

 

 

母屋とガレージをつなぐ渡り廊下の2階は、母屋のバルコニーからガレージ上のハーブガーデンに行くための渡り廊下となっている

 

【クロゼットルームはIKEAの家具が大活躍】

 

 

 

 

 

機能性に優れたIKEAのクロゼットを採用(左)大きな床下扉を開けると半地下の空間が現れる(右)

 

1階に配置した約9畳分ある大きなウォークインクロゼットには、実はIKEAの収納家具を活用しています。洋服の丈に合わせて棚を取り付けたり、ズボンやスカートなどボトムス用のハンガースペースもあり、カスタマイズできるので、とっても便利。

本体は可動式。足りなくなれば買い足すこともできます。造作するよりも安価で機能性が高いため、広めのウォークインクロゼットにはおすすめ。

また、床下収納も設置しています。床の扉を開けてハシゴを降りると、床下に人が歩けるほどの半地下のスペースが。ここには、スーツケースやオフシーズンのものが収納されています。

 

★レモンの技 床下を見れば、その家の「質」が分かる

 

 

 

 

 

床下空間は、収納だけでなく、配管などのメンテナンスや点検のための場所でもあります。この家では、配管はメンテナンスがしやすい(配管の交換がしやすい)、さや管ヘッダー工法が採用されています。また、基礎の立ち上がり部分には断熱材が敷かれていて、床下空間が寒くなったり、暑くなったりするのを防いでいます。床下のように表側ではない、裏側の部分を見ることで、その家がどのくらい丁寧につくられたかを計ることができます。