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コラム

CASE_01地下車庫付きの 家を建てる~地域の暮らしを楽しむ住まいのアイデア~

 

 

 

 

 

■Data 【本浦の家】

所在地:広島市南区
家族構成:5 人(夫婦+ 子ども3 人)        敷地面積:192.54㎡               延床面積:241.37㎡                地下:72.00㎡
1 階面積:90.37㎡                 2 階面積:79.00㎡
断熱性能:0.6 W/㎡・K
気密性能:1.6㎠ /㎡
設計:プレゼントデザイン
施工:小松工務店

 

広島市南区、広島市内と瀬戸内海を見渡す黄金山の中腹。この家が建つ本浦は広島湾と市街地の間にある山の中腹にあります。この地は、この家に暮らすH様(ご主人)が生まれ育った場所です。14年前、実家の隣の土地が売りに出され、「隣の家は借金  してでも買え」という言葉に従うように購入。2年前に古家を取り壊し、現在の家に建て替えました。今もH様の母が住む実家と軒を   連ねて暮らしています。

傾斜地に家を建てる場合、一般的には土を抑える擁壁をつくって、土地を平坦にする造成工事を行います。ただし、これには膨大な費用がかかるため、木造住宅の基礎を高くつくり、擁壁も兼ねた地下室や地下車庫にする方法があります。この家では、もともと古家にコンクリートの地下車庫がありましたが、築40年以上が経ち、湿気がひどくコンクリートの劣化が激しかったため、撤去して 新しく基礎を打ち直しています。この車庫は、地下室扱いとなります。

玄関は、道路から階段を上がったところにある来客用と、ガレージの奥から入る家族用の2つがあり、雨の日には濡れずに車に乗り降りできるほか、ガレージ内はゴミの仮置き場にしたり、作業スペースやアウトドア用品を置いておく倉庫の役割も兼ねており、家族各々が便利に使っています。

 

 

 

 

 

 

 

バルコニーをぐるりと囲むように設えたLDK。キッチンやダイニングなど、どこからでも外の様子が分かる開放感がこの家の魅力。中学生を筆頭にした3人の子どもたちの世話に専念する奥様は、キッチンを中心にした家事動線にこだわった。パントリー、キッチンとバスルームの動線を一直線でつなぎ、勝手口は隣家の母の家に直行できるようにしている。洗濯は上階で行い、その場で室内干しして近くのクロゼットに収納する動線だ。

 

           

 

 

 

 

 

道路から階段で上がる来客用玄関(左)            地下車庫とつながる家族用玄関(右)

 

 

 

 

車庫は、自転車置き場や倉庫を兼ねる。奥の玄関は家族用

 

【住宅街で開放的に暮らす】

仕事で多忙な毎日を送るご主人は「家にいるときはリラックスできて、体調を整えられるような快適な環境にしたい」と希望しました。室内の暑さ、寒さ、湿度、騒音、そして快眠できる環境にこだわり、平日の夜でも、プライベートバルコニーでひと休みすることをイメージしました。

住宅街の中で日照や通風を十分に確保し、周囲を気にすることなく、開放的でリラックスできる場所をつくる――。そこで、敷地の中で最も日当たりが良い南東に広いバルコニーをつくり、そのまわりにLDKを配置して、窓を大きく開くプランを提案しました。バルコニーには角度を変えられるルーバーを設置して、日照や風通しを調整しながら、外からの視線を遮ることができます。リビングの掃出し窓を全開放すれば、バルコニーとリビングが一体となり、光と風があふれる開放的なプライベート空間の完成です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南東に大きく開いた明るいリビング。バルコニーはセカンドリビングとして活躍し、家族の癒やしの場になっている。リビングの床材はバーチ(カバ)で明るく爽やかな印象に。壁は漆喰を塗っているため調湿効果に優れ、室内を快適に保つ

 

 

 

 

 

 

 

バルコニーのアルミルーバーは、必要に応じて角度を調整できる。外観もシャープな印象に

 

【会話を楽しむオープンキッチン】

キッチンは奥様のこだわりがたくさん詰まった場所。アイランド式にして、キッチンから部屋中を見渡せるつくりです。ステンレスキッチンは、憧れのトーヨーキッチン製。シャンデリアもセットで購入し、リビングからも目に入るようにあえてシンクの上に取り付けました。背面のキャビネットのモザイクタイルも、奥様が選んだもの。ダイニングテーブルはキッチンの天板の高さと幅に合わせてオーダーメード。食べ盛りの子どもたちへの配膳もスムーズです。

また、キッチンに立ったときに、ダイニングやリビングの子どもたちと同じ目線の高さで会話ができるようにと、キッチンの床を1段下げてつくっています。オープンキッチンをより使いやすくする、おすすめのアイデアです。

 

 

 

 

 

 

キッチンとダイニングテーブルを直列に配置し、キッチンの床を下げることで、家族と視線を合わせながら、家事ができる

 

 

【縦をつないで空気の流れをつくる】

家の中を夏も冬も快適に保つためには、暖かい空気は上に、冷たい空気は下に移動する性質があることを覚えておきましょう。たとえば冷房を効率良く家全体に行き渡らせたいなら、家の中で最も高いところにエアコンを設置して上から下へと冷風を流します。反対に暖房はできるだけ低い位置から温風を吹き出し、下から上へと暖めるように計画します。

H様の家では、冷房も暖房もロフトに設置した業務用エアコン1台のみです。エアコンの冷風や温風は、壁の中に埋め込まれたダクトを通って、各部屋の吹き出し口から家中に広がる仕組み。家の中心につくった階段は、ストリップにしているため、空気の流れが止まることなく、上から下へ下から上へと適温を保つべく常に循環しています。また外の新鮮な空気は隣地側から取り入れ地中の熱を吸収しながらロフトのエアコンに届けます。一方、室内の暖かい汚れた空気はトイレから外の室外機を通して排出されます。

 

 

 

 

 

 

ストリップ階段にして地下から2階まで縦につないで、空気の通り道となっている。このほかにも吹き抜けを利用して、適温に保たれた空気が家中に広がる。

 

 

 

 

2階ロフトに設置した業務用エアコン。今のところこの1台のみ。2階のロフトに設けたハイサイド窓は、ロフトに熱気がこもらないように屋外へ排出する役目を果たす。

 

 

 

 

エアコンの吹き出し口が各部屋に設けられている

 

 

 

 

 

沿岸部や都市部では南隣地との距離が狭く、1階には十分な光を入れることが困難な場合がある。うまく縦をつなぐことにより、空気が循環する快適な住まいに