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コラム

おわりに

■Data 【広中迫の家】
所在地:呉市広中迫
家族構成:2 人(夫婦)
敷地面積:159.28㎡        延床面積:139.95㎡
1 階面積:77.84㎡     2 階面積:62.11㎡
断熱性能:−       気密性能:0.84㎠ /㎡
設計:柴村工務店     施工:柴村工務店

 

【あれから1 8 年。夫7 0 歳、妻6 5 歳穏やかな日常】

広島県呉市。M様夫妻は2人で静かに暮らしておられます。ご主人は今から18年ほど前、仕事中に交通事故に見舞われました。その瞬間「頚椎をやられた」と、ご主人はすぐに察したといいます。治療とリハビリの10年。多少の不自由はあるものの、今こうして自身の足で歩くことができるようになりました。それは奇跡的なことですが、奇跡だけではなかったのです。

事故直後、医師からは「歩くことはまず無理」と宣告されました。頚椎の損傷は重症で、後遺症として麻痺が残るためです。元の体に戻ることは無理でも、せめて歩けるようにならないものか、とご主人は治療とリハビリを重ねました。

ケガの後遺症の1つとして自律神経障害があります。汗が出にくいため体温調整ができず、暑さ寒さに敏感になり、特に寒いと麻痺を起こした部分がピリピリと痛むのです。右手に麻痺が残っているため、車椅子を漕いで使うことも困難。だから「歩けるようになりたい」という一心でリハビリに励みました。

14年前に新築した自宅は高断熱・高気密にしたため、室温はいつも一定で寒さを感じることはありません。新しい家に住んでから、ご主人の体の痛みは和らぎました。痛みが減ると体が動かしやすくなり、自然と筋肉もほぐれてきたのです。

こうして事故から18年経った今、ゆっくりとではありますが自身の足で歩き、自分で食事ができ、トイレにも行くことができるまでに回復をされています。「医者が言うには『驚異の回復力』らしいですよ」とイタズラっ子のように、事も無げに笑うご主人。事故直後は失意の中にあったはずですが、笑顔は思いのほか明るいのです。その笑顔は、奥様の存在なくしては生まれません。治療やリハビリ、そして日常生活の介助など、奥様の献身的なサポートがあったからこそ、ここまで回復できたのです。この日も立ち上がったり、歩いたりするご主人へ過剰に手出しをすることなく、それでいて温かく見守る奥様の姿がありました。

 

「歩けるようになりたい」その思いで住まいを再考

 

 

 

 

 

 

 

 

体がほぐれる、動く。変化をもたらした暖かな家

 

 

 

 

 

 

【日々の暮らしを楽しみ癒やす奥様の大好きな家】

 

 

 

 

リビングダイニングの床は無垢のスギ材、腰板はパイン材。キッチンは対面式でところどころに張られたタイルはかわいらしいデザイン。リビングのドアにはステンドグラスが静かな光をたたえています。こうしたインテリアはすべて奥様の好みなのだとか。「1年を通して室温が20度前後なので快適で、住み心地が良いんですよ」と奥様。室温を保ったまま24時間室内の空気が循環するよう考慮された家であるため、いつでも清々しいのだとか。また真冬でも床が冷たくないのは、ご主人だけでなく奥様にとってもありがたいこと。ご主人が飲みやすい場所に紅茶カップを置きながら、ニコニコと話しに加わる奥様。この10年には不安や苦労がおありだったはずなのに、そんな言葉はひと言も発することはありません。こんな奥様だからこそご主人も頑張ってこれたのでしょう。

 

【孫が遊びに来ることが何よりも楽しみ】

 

 

 

 

リビングにはかわいらしい子どもたちの写真が並んでいます。2人のお孫さんです。現在7歳と4歳。かわいい盛りです。年に数度帰省してくるのが夫婦の楽しみです。「おじいちゃんの体が少し不自由だということが最近分かってきたようで、子どもなりに少し気を使うようになりましたね。とはいえたまに遊びに来ると元気いっぱいで、一緒にいると体脂肪が2、3%減りそうですよ」とご主人は笑わせます。そして会うたびに「元気でいなければ」と思いを新たにされます。

M様の家を訪ねてくるのは、お孫さんだけではありません。昔の同僚や近所の友人などが自然と集まり、みんなが「居心地が良いから」とのんびりとおしゃべりを楽しみ、笑い、食べて帰るのだとか。こうした心の交流も夫婦の活力になっています。「現在70歳。今以上のことは望みません。現状維持で十分です」。

 

 

家族や友人と過ごす、             穏やかな日常こそ、最高の宝もの。

 

時が経つごとに幸せが増す           心も体も心地よい               住まいづくりが、                広島に広がりますように。