*
コラム

CASE_03日当たりを読みながら計画する~地域の暮らしを楽しむ住まいのアイデア~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■Data 【大塚西の家】

所在地:広島市安佐南区
家族構成:4 人(夫婦+子ども2 人)
敷地面積:188.01㎡ 延床面積:159.69㎡
1 階面積:91.99㎡(ガレージ含む)71.57㎡(ガレージ除く)
2 階面積:67.70㎡(ウッドテラス含む)51.14㎡(ウッドテラス除く)
断熱性能:0.52W/㎡・K 気密性能:0.8㎠ /㎡                        設計:田村建設建築設計事務所 施工:田村建設

 

H様家族は、夫婦と元気な兄弟の4人家族。以前から近くの賃貸に住み、気に入っていた環境。市街へのアクセスも便利な理想の場所と出合えて、この土地を購入。約57坪の北西角地で十分な広さはありましたが、南側と東側には、境界ギリギリまで隣家が建っているため、日当たりを心配されていました。

「もともと太陽光や熱を利用して設計するパッシブデザインに興味をもっていました。プランの際に、夏と冬の日照をシミュレーションしながら説明してくれて、冬でもリビングに日当たりがとれることを確認できたので、安心して家づくりを進めることができました」とご主人。南側の隣家からできるだけ距離をとって、冬でも1階リビングに日が当たるように北側に寄せて家を配置しました。さらに隣家の影をかわしながら、少しでも長く日が当たるように、リビングを吹き抜けにして2階の窓からも日射を取り入れています。そのため、冬もリビングは自然光で明るく、天気の良い日の昼間は、暖房を付けなくても暖かく過ごせているそうです。

反対に夏は、できるだけ日射を部屋に入れないように、軒で日射を遮ります。軒の長さもシミュレーションしながら決めました。加えて、この家には、西側にガレージと屋根付きのウッドテラスがあります。これらは、道路から住居内が丸見えにならないための「壁」の役割を兼ねて配置されていますが、夏の西日を受け止める機能も果たしています。そのおかげで家の中に西日が入ってくることがなく、夕方から部屋の中が暑くなることもないのです。

 

 

 

 

 

 

 

自然素材の「シラス」を使う「そとん壁」。劣化が少なく補修が不要、継ぎ目のない美しい印象の外観に

 

●日照シミュレーション

家の3Dモデルをつくって、敷地周辺の条件を入力すると、その地域の気象データから、日当たりをシミュレーションすることができる

 

 

 

 

 

4月1日10時頃のリビングの様子              4月1日10時頃のダイニング・キッチンの様子

             

 

 

 

 

 

夏の正午。冬と比べて太陽高度が高いため、南側は    冬の正午。隣家との距離を確保したことで、1階にも            軒によって直射光が遮られている            直射光が入っている

      

 

 

 

 

 

夏の夕方。西側のバルコニーに直射光が当たっている   冬は夕方までしっかりと直射光が得られる              が、LDKには入らない

 

【家と町の間を豊かにつくる】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

西日と道路からの視線を遮る役割を果たしているガレージと屋根付きウッドテラスは、H様家族にとってなくてはならない場所。ガレージもウッドテラスも南北に抜けているので、風通しが良く、湿気や熱気がこもることがありません。清潔で明るく、洗濯物を干したり、子どもたちが昆虫を飼ったり、思い思いの使い方をしています。特にウッドテラスはご主人のお気に入り。昼間は子どもたちの遊び場になっていますが、夜はご主人がお酒を飲んだり、考えごとをしたり、1人の時間をここで楽しんでいるのだとか。このように外(道路)と内(家)の間の空間を、上手に日常生活に取り込むことで、ほかにはない自分たちだけの豊かな場所を手に入れることができるのです。

 

 

 

 

 

家の中と外をつなぐようなユニークな空間は、日当たりの良さを生かした物干し場、部屋に持ち込みたくないものの置き場所にと大活躍。雨の日でも安心

 

 

【北側は小さな窓から光を取り込む】

 

 

 

 

 

 

2階の踊り場スペースは仕切らず多目的なファミリー空間に。床と天窓のある天井には無垢の木を採用してつながりも演出

 

 

★レモンの技  壁掛けテレビの配線スペース

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近年、テレビを壁に掛ける家が増えています。テレビボードを置かない分、部屋を広く使えるからです。その際に配線やOA機器も壁の中に収納するとテレビ周辺が散らかることもありません。大塚西の家では、階段下を利用して、配線スペースをつくりました。普段は、可動式の収納棚で塞いでおいて、必要なときに棚を動かして中を確認することができる仕組みです。

 

 

【子どもたちが健やかに育つ住まい】

日照シミュレーションによって日当たりを確認したリビングは、吹き抜け上部の窓から1年を通して自然光が入り、明るく気持ちの良い空間になりました。また、2階の子ども部屋やウッドテラス、ロフトには吹き抜けに対して窓がついており、窓を開ければリビングにいる家族と会話できるようになっています。そのため、1階から声をかければ、子どもたちは窓を開けて返事をします。家中を駆け回る兄弟。この家を隅々まで使いこなしているのは、彼らかもしれません。育ち盛りのあふれんばかりのパワーを、家がしっかり受け止めてくれているようです。

 

<すべての部屋がリビングとつながる>

 

 

 

 

 

どこにいても家族が緩やかに結ばれる間取りと開口部。お互いの息づかいを感じて暮らせる家になった

 

 

 

開放的な吹き抜けのリビングから階段と2階、デスクコーナーも一望。無垢の木が白いシンプルな壁と素敵なコントラストを生み出している

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視界の広いオープンな子ども部屋。将来は間仕切りできるよう2つの出入り口、遊び心いっぱいのロープやボルダリング壁を設計。ロフトも楽しい隠れ家のよう。顔が見える1階のデスクコーナーや土間クロゼットも便利