*
コラム

家のつくりによって倒壊パターンが違う~安心・安全に暮らすための住まいの知識~

家が地震によって倒壊する事例は、いくつかのパターンに分類できます。典型的な3つのパターンを見てみましょう。

①1・2階がともに潰れてしまったパターン

 

 

 

主に古い家に多く見られます。現在の建築基準法の耐震性能を有しておらず、木部の劣化(腐朽・蟻害)も進行してしまっていることが多いです。

 

②1階が倒れて2階がその上に載って倒壊したパターン

 

ある程度新しい建物でも見られます。1階と2階の揺れ方がずれ、1階が耐え切れなくなって倒壊するケースです。柱・耐力壁の直下率(※)や配置バランスの悪い建物がこういった倒れ方をしやすいです。

※直下率:2階の耐震壁(地震などの力に対して耐える壁)の下に1階の耐震壁がどれだけあるかを示す値。

 

③全体的に傾いて倒壊したパターン

 

 

 

下からの突き上げにより上部木構造が持ち上がって基礎とずれてしまい、支えがなくなり倒壊します。直下型の地震のときに起こりやすく、基礎と上部木構造との連結強度が不足している場合が多いです。

 

このように、地震による倒壊は家の形や構造の不具合や劣化が原因となって起こる場合がほとんどです。一方、建物がダメージを受けて倒壊に至る過程も、3つのタイプに分けられます。

 

①一発KO型
1度の地震で、建物の耐震強度を超える大きな揺れ(地震力)を受けて倒壊してしまうタイプ。

②蓄積疲労型
1度の地震では壊れなくても、過去の地震や余震など数回の揺れによって少しずつダメージを蓄積し、最終的に倒壊してしまうタイプ。

③ブランコ型
地震の揺れと建物の揺れの周期がそろってしまい、ブランコのようにどんどん揺れが増幅して倒壊してしまうタイプ。

 

これら3つのタイプに共通してできる対策としては、当然ですが建物を強くする、つまり耐震等級を上げることです。具体的には、「地盤」、「基礎」、「土台」、「床」、「壁」、「屋根」のそれぞれに対策を講じます。この中で、屋根と床がなぜ大事なのか、イメージしづらいという方がいるかもしれません。では、蓋の開いた段ボールと、蓋を閉めてガムテープで留めた段ボール。横から押したときに形を崩さず、しっかりしているのはどちらだと思いますか? そうです。当然、蓋を閉めたほうが形が崩れにくいのです。家でこの蓋の役目をするのが、1階から見た2階の床であり、2階から見た屋根なのです。そしてガムテープの役目をするのが部材をしっかり結合させる金物です。基礎の上に立つ柱や梁、壁、屋根、床。これらが十分な強度で結合され、一体となって地震の揺れに抵抗できるつくりにする必要があります。

過去に地震を経験した家であれば、②を引き起こす可能性があるため、外見はそんなに傷んでいなくても、柱や筋交い、金物が傷んでいる場合があります。専門家による耐震診断を受けるなどして確認しましょう。③の場合は制振ダンパーを施工するのも有効です。